商品の特徴
Inchgower インチガワー蒸留所
近隣:エルギン市から東へ25km、オルトモア蒸留所から北に12km、グレングラッソウ蒸留所から西に15km
創業1871年 オーナー Alexander Wilson & Co.
1936年 オーナー会社倒産、地元の公的な委員会が買収
1938年 Arthur Bell & Sons社が買収
1985年 Arthur Bell & Sons社がギネスに買収される
1987年 ギネス社が業界最大手のDCLを買収し、UDV (ユナイテッド・ディスティラーズ&ビントナーズ) を組織して、傘下の蒸留所、ブレンド会社を管理。
1991年 UDV社が「花と動物」シリーズ22本を新発売
1997年 ギネスとグランドメトロポリタン社が合併し、世界最大の酒類製造会社 Diageo の誕生
冷却フィルターについて
このボトルは冷却フィルターを使っていません。
写真は、典型的な形の冷却フィルター Plate & Flame filters
一般的にアルコール度数が低いウイスキーは低温になると、高級脂肪酸エステルや不飽和脂肪酸のわた状の塊や濁りが生じるために、それらが冷却フィルターで取り除かれます。
通常、43%を下回るスコッチウイスキーは、瓶詰前に冷却フィルターを行っています。
冷却フィルターを掛ける主な理由は2つあります。
ひとつは、製品の見た目の問題です。
アルコール度数が40%から43%の場合、温度が4°C程度以下になると、瓶の中の液中に「紐のようなもの」「濁りのようなもの」が現れ漂うことがあります。
それは、不飽和脂肪酸であり、また、高級脂肪酸がエタノールと化合して生成される油性成分の高級脂肪酸エステルです。
度数の高いものだと、液中に溶解していて、何も問題を引き起こしませんが、温度が下がると、不溶化して、表面を浮遊したり、ウイスキーに濁りを引き起こします。
瓶の中に「紐のようなもの」「濁りのようなもの」が現れると、見た目が悪く、消費者に、劣化しているのではないか、と疑われます。
それを避けるために、瓶詰前に、それらの原因となる不飽和脂肪酸や高級脂肪酸エステルを、冷却フィルターによって取り除きます。
もう一つの理由は、品質の問題です。
「紐のようなもの」「濁りのようなもの」として現れる高級脂肪酸エステルが瓶中の酸素と反応して、不快な油臭を発生することがあるため、その原因となる高級脂肪酸エステルを冷却フィルターで取り除き、品質の劣化を未然に防ぐことができます。
Signatoryのun-chill-filtered collectionは、46度ですが、冬場であっても、紐のようなもの、濁りのようなものが現れたのを、私は見たことはありません。
55度を超えるようなものは冷却フィルターを掛ける必要がないため、un-chill-filtered の表記がなくても、フィルターは掛けられていません。
46度~55度の間のものも、「紐のようなもの」「濁りのようなもの」が現れることは非常に稀なため、フィルターを掛けていないと思われます。
43~46度の間は、大手の製造業者のものは、un-chill-filteredの表記がなければ、掛けています。ただ、小規模業者のものは冷却フィルターを駆けるとは限りません。
その理由は、下に掲げるお金の問題があるからです。
◆瓶底に析出する「澱」について
モルトウイスキーに限らず、ブレンドウイスキーでも、オールドボトルなどでは、瓶底に「澱」が出ているのを見かけます。
その澱は香味成分が析出したものです。香味成分は高級アルコール(麦汁中の糖とアミノ酸からウイスキー酵母によって造られます)と酸が反応してできるエステル類です。
その澱は、品質が良いウイスキーの証です。瓶底に降りているため、瓶中の空気に触れないので、品質劣化を引き起こしません。
シグナトリーの Cask Strength Collectionや、ケイデンヘッドのAuthentic Collectionなどは、発売されてから数年経つと、瓶底に「澱」がたくさん出てきます。
その澱となる成分は、冷却フィルターを掛けると取り除かれ、澱にはなりません。
◆冷却フィルターを掛けるには、コストが掛かる
ウイスキー蒸留所が冷却フィルターを掛けるかどうかは、経営問題にかかわります。
冷却フィルターを掛けるのには、冷却するための電気、フィルターの材料(珪藻土)、労力が必要で、コストがかかるからです。
どの程度まで温度を下げるか、0-4度程度か、5度-10度か、あるいはマイナス10℃程度か、フィルターの層を何層にするかなども、コストと実際の効果を天秤に量る必要があります。
グレンモーレンジではフィルターにかける前に冷やしたウイスキーを約3時間放置するそうです。長いところでは、24時間放置する蒸留所があるそうです。
◆冷却フィルターを掛けないものの方が、掛けたものより美味か?
このことについては、ウイスキー業界のプロ、一般消費者を対象とした実験結果によって明らかになっています。
結論的には、熟成期間の短いもの(3年程度)の場合は、「冷却フィルターを掛けた方が美味しく感じられる」という、検証結果が得られています。
加水無しの長期熟成ウイスキーではどうかについても検証結果が出ており、「掛けても掛けなくても変わらない」。
その違いを感じ取れる人はいなかったということが判っています。
つまり、「冷却フィルターを掛けることによって取り除かれる香味成分は、業界のプロ、一般の消費者に限らず、人間の味覚では感じられない」という結論です。
結論的には、冷却フィルターを掛けると、先にお知らせした、瓶中の酸素に触れると不快な油臭を発生する原因となる高級脂肪酸エステルをろ過するので、むしろ、冷却フィルターを掛けた方が良いということになります。
「冷却フィルターを掛けていません」という言葉は、一見、品質重視を謳っているように見えて、実は、むしろ、ウイスキーマニア向けに、熟成庫に眠っていた原酒そのままであるという、ある種のロマンを感じさせるための巧妙な宣伝文句となっている、という点を知っておく必要があると思います。
【シグナトリービンテージ社】
SIGNATORY VINTAGE SCOTCH WHISKY COMPANY
1988年エジンバラのプレストンフィールドハウスホテルの支配人アンドリュー・サイミントン氏が設立。
ファーストボトリングは1968年のシェリーカスク・グレンリベット。
エジンバラ・ニューヘイブンに事務所と瓶詰設備を構えていた。
2002年にエドラダワー蒸留所を買収して、事務所、熟成庫、瓶詰場を同蒸留所の隣に移転した。それらの建物は、かつての農場蒸留所の風情を再現した建築様式で建てられており、多くの観光客が訪れている。
海外への商品販売は、シグナトリー名と、ダンイーディアン名の2つのブランド名を使い分けて、それぞれのブランド商品の一手販売代理店契約を結んでいる。主にスイス、フランス、スペイン、イタリアなどで海外商品販売をしている。
フランスでは、Signatory シグナトリーブランドは、La Maison du Whiskyが取り扱い、Dun Eideannブランドは、Auxilが取り扱っている。
イタリアでは、Signatory シグナトリーブランドは、Velierが取り扱い、Dun Eideannブランドは、Donateが取り扱っている。
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