商品の特徴
Isle of Arran Distillers アイル・オブ・アラン蒸留業者
アラン蒸溜所は1995年にアラン島に160年ぶりに復活した島唯一の蒸溜所です。
アラン島はキャンベルタウン半島の東にあり、近接蒸留所スプリングバンク蒸留所からは直線距離で北東に約30kmに位置しています。
スコットランド最大都市グラスゴーからはクライド湾を挟んで西南西約60kmに位置しています。
ローランドのアイルサベイ蒸留所からは北北西60kmに位置しています。
同蒸溜所は独立資本のため、ブレンド用の原酒づくりがメインではなく、シングルモルトとして飲むためのウイスキーをつくっている数少ない蒸溜所です。また極小の4基(2対)の蒸溜器でゆっくり蒸溜を行っています。アラン島はかつては50以上の蒸留所がありウイスキー製造業が盛んでしたが、1837年に Lagg 蒸留所が閉鎖してから、島に蒸留所はなくなり、1995年のアラン蒸留所操業開始まで、158年間、蒸留所空白地となっていました。2019年になり、アラン蒸留所が島の南部に Lagg 蒸留所をアラン第2蒸留所として再建し、操業を開始しています。
島で製造されるウイスキーというとピーティなものを作り続けていると思われがちですが、実は、ノン・ピートのハイランドスタイルのウイスキーとして製造が開始されました。通常の新蒸留所と同様に、各工程の仕事がやりやすいように、小さなセミロイター式糖化槽、木製の発酵槽、2器の蒸留釜が、平屋の建物の中に収まっています。
ウイスキーの特徴は、柑橘を基調として、その背景に新鮮な麦芽のパリパリ感が感じられます。蒸留液は、品質を重視する樽熟成方針に基づいて製造されており、その蒸留液が長期熟成に向いていることがこれまで明らかに示されてきました。最近ではピーテッドウイスキーも製造されています。
【歴史】クライド湾の島であるアラン島はウイスキー製造の長い歴史を持っています。肥沃な土地であり、南部の農民は農業に必要な天然素材豊富であるにもかかわらず、18世紀後半の1774年に400ガロン(1,800リットル)以下の初留釜と、100ガロン(450リットル)以下の再留釜が使用禁止となり、家で小さな蒸留器を使って蒸留することが禁止されたのを機に、農民達は密造をすることになりました。
結局、密造ウイスキーの需要は高まり、アラン島のウイスキーは距離の近い大都市グラスゴーでよく売れることになりました。当時、島でラムも蒸留された記録が残っています。1823年に酒税法が改正され、アラン島では Lagg 蒸留所が1825年に政府公認蒸留所となりましたが、1837年に創業停止となってしまいました。
それから158年が経った1995年になって、シーバスブラザーズの前社長ハロルド・カリー氏が2000人の個人投資家を含む合弁企業を立ち上げ、島の北部のLochranzaに蒸留所建設地を定めたことで、すべてが変わりました。その場所はアラン島のウイスキー製造の歴史の中では未知の土地でしたが、その場所が選ばれたのには、2つの理由がありました。その理由は、すばらしい水を確保できることと、観光業でした。アラン蒸留所は、今や、毎年6万人が訪れる観光地になっています。
1995年の操業開始時に2000人以上の個人投資家から資金を集めたことによって、個人に樽ごと原酒を売ってきました。それによって、創業当初の資金の流れがスムーズになり、新たにウイスキーを製造する資金を得ることができましたが、その一方で、アラン蒸留所の商品のブランドを確立するために必要な十分なストックが無くなるという結果になりました。それによって、個人に樽原酒を売ることは止められました。
瓶詰は1998年に限定生産の3年ものが発売され始まりました。その後、後塾(フィニッシュ)した商品が発売されましたが、現在はフィニッシュものは減っています。ピーテッドウイスキー Macrie Moor が2010年に発売されました。
2017年に初留、再留器を増設し、生産能力は年間120万リットルに倍増しました。また、増え続ける観光客に対応するため、観光案内所に隣接する第2テイスティングルームを増設しました。さらに、その隣接に「Rowan House」という名前の会議室、テイスティングバー、ブレンド室を備えた建物を増設しました。
2019年に、Isle of Arran 蒸留所は島の南部にLagg蒸留所を開設しました。それを機に、アランの商品を見直し、ボトルの形状、包装をすっきりした現代風のものに変え、Barrel Reserve と The Bodega というシェリー樽熟成品の2つをアラン蒸留所の中心的な商品として発売開始しました。
1994年 アラン島の北端ロックランザに蒸留所の建設が始まる。
1995年 蒸留開始
1997年 観光案内所がエリザベス2世女王によって開所
1998年 最初のボトル3年が限定発売
2010年 最初のピーテッドウイスキーMachrie Moorを発売
2015年 18年を限定発売
2017年 蒸留器を2器増設し、生産能力が2倍となる。
2019年 アラン島南部 Laggにラグ蒸留所を開所。それに伴い、アランの製品群を見直し、改変。
「アランの現在」 蒸留責任者 James Mactaggat インタビュー 2017年
日本の輸入代理店ウイスクイーのウエッブに蒸留責任者ジェームズ・マクタガート氏のインタビューが掲載されていますので転載します。
(2018年1月9日掲載) http://whiskymag.jp/wm148_arran/
アラン島で150年以上ぶりにウイスキーづくりを復活させたアラン蒸溜所も創立20年を超え、ラッグでの新蒸溜所建設も順調に進んでいる。マスターディスティラーのジェームズ・マクタガートが、人生、ウイスキー、音楽について語ったインタビュー。
ジェームズ・マクタガートが、アイラ島のボウモア蒸溜所で事務職員に採用されたのは23歳のとき。当時のハリー・コックバーン社長によって、事務職から生産チームに異動させられたことで運命が動き出した。ウイスキー業界におけるジェームズのキャリアは、このとき始まったのである。
その先の10年は、ウイスキーづくりのあらゆるプロセスについて学ぶ日々。ピートの切り出し、フロアモルティング、マッシング、貯蔵など、ボウモアでの仕事はアイラで生まれ育ったジェームズにとって「完璧な体験」だった。そして2007年のある日、ゴードン・ミッチェルの引退に伴ってアラン蒸溜所が新しいリーダーを探しているというメッセージが届く。
断る理由などなかった。電話を受け、簡単なミーティングを終えると、すぐにジェームズはアラン蒸溜所の舵取りを任されることに。それからというもの、アイラ島の自宅から毎週アラン島のロックランザに通う日々が始まった。
2017年10月、ジェームズのマスターディスティラー就任10周年とウイスキー業界勤続40周年を記念した特別エディションのアランモルトが発売(日本での発売は2018年1月中旬)。この節目の年に、ジェームズがアラン蒸溜所での10年を振り返るインタビューに応じてくれた。
◆ ロックランザで働き始めたとき、まずはどの分野に注力しようと思いましたか?
ここに来たばかりのときは、樽に関する戦略がまだ未完成の状態でした。アラン蒸溜所を創設した直後に、財政的な苦難の時期があった影響です。それでもアランが生産するスピリッツは一貫して素晴らしい品質でした。ちょうど私がボウモアに務め始めた頃と同じような状況だったので、何をすべきかはわかっていました。ボウモアでの最初の10〜15年は、まだアンドリュー・ランキンがやってくる前で、樽の品質は二の次の状態。当時のスコッチウイスキー業界が、おしなべてブレンデッドウイスキー主体だったことも理由のひとつです。ボウモア蒸溜所では、シングルモルトに本腰を入れる方針になってから樽の品質が重視され始めました。そんな経験もあって、アランにも確固たる樽熟成の戦略が必要であることはすぐにわかったのです。
◆ 熟成中の原酒も新しい樽に詰め替えたということですか?
古いストックの多くは詰め替えの必要がありました。でもワインとは異なり、スピリッツは詰め替えによって確実に品質を向上させられます。アランでは10年前からかなり樽の品質を改善してきたので、現在ボトリングしているウイスキーの品質には自信がありますよ。これも私が必要だと考えた投資に惜しみなくサポートを提供してくれたアラン経営陣のおかげです。
◆ 過去10年で変わったことは他にもありますか?
ここに来たばかりのときは、古い貯蔵庫が2棟、スチルが2基、ウォッシュバックが4槽という設備でした。でもアランはすべて私が望んだとおりの改修や設備投資を実行してくれました。現在の蒸溜所機能は、10年前の約2倍の規模にまで拡張されています。新しい事務室、ブレンディングルーム、VIPラウンジまで完備して、目に見えた成長に感謝と誇りを感じています。
◆ アランは新しい蒸溜所をラッグに建設し、そこでピーテッドモルトを生産することを明らかにしています。これによって、ロックランザでは今後ピーテッドモルトの生産を終了することになるのですか?
アランでは2008年からピーテッドモルトを蒸溜するペースを上げ、ピートレベルも20ppmに高めました。2011年からは50ppmのスピリッツもつくっていますが、これは全生産量の15%だけ。来年からはラッグに役割を移すので、ここロックランザでは50ppmの生産を終了します。でも引き続きロックランザでは「マクリー・ムーア」のために20ppmのスピリッツを生産する予定です。
◆ 建設しているラッグ蒸溜所の進捗状況はいかがですか? この新しい蒸溜所にも深く関わっているのですか?
深く関わっています。新しいスチルの設計にも関わる予定です。スチルの形状についてはまだ完全に決めたわけではありませんが、マッシュタンは4トン、ウォッシュバックは20,000リッター、スチル2基という大枠は決まっています。スピリッツのスタイルをまだ議論中で、コンデンサーのタイプや熱回収の方式についてもこれから結論を出します。蛇管式のコンデンサーは熱回収が難しくなりますが、その一方でピーテッドモルトのスピリッツに土っぽい特徴を授けてくれます。多管式のコンデンサーは熱回収率が高くて、ビジターセンターの暖房にもなるので人気の方式。どちらにしようか思案しているところです。
◆ 蒸溜所を訪ねるベストシーズンはいつですか?
年中いつでもお待ちしていますよ。でも2018年6月30日の「モルト&ミュージックフェスティバル」はぜひお見逃しなく。セールス担当のアンディーと私も演奏するんです。共に別々のバンドでギター経験があったので、ユニットを組みました。ベースとドラムも加入しています。
◆ それは楽しみですね。バンド名は ?
「ジェームズ&ステーブズ」です!
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